もらってください、花宮先輩。〜君の初めてが全部欲しい〜





「またね、奈湖」
「また明日ね〜」
「バイバイ」



 友人二人、もとい早紀と彩菜に手を振り、教室を後にする。


 猫を被っていたこと、本当は恋愛に対して積極的ではなかったこと、輪から外れるのが怖くて話を合わせていたこと、それらを打ち明けても尚二人は笑ってくれた。


 そして「うちらも、もっと早く聞いてあげればよかったねごめん」と謝ってくれた。二人は悪くない、私が撒いた種なのに。



 私は下校時刻の生徒達でごった返した廊下を一人進む。


 私も先輩も今朝で風紀委員の検査当番を終え、一緒に帰ろうと約束をしていたからだ。校門で待ち合わせている。


 そんなとき、ふと廊下の窓の外に目がいった。校舎裏の花壇に、松井さんと取り巻きの女子達が集まっていた。私は思わず立ち止まり、その光景を見つめる。


 そしてしばらくすると、松井さん達はクスクスと笑いながらその場を去る。目を凝らすと、花壇には泥だらけのローファーがあった。