そして、私は咄嗟に先輩と距離を取ろうとしたけど、いつの間にかがっしりと掴まれていた腕のせいでその場から動けなかった。
キス、キス……キスってあれだよね?唇くっ付ける、あれだよね?あの、ドラマとかでよく見る。
先輩が、私と?なんで?私なんかとしても絶対楽しくないのに。いや、キスに楽しいもクソもないのは分かってるけど、分かってはいるけど……!!
そんな、脳内がお祭り騒ぎでパニック状態な私に、先輩はもう一度口を開く。
「キスしたい」
「き、聞こえてますっ……!!」
「あれ?聞こえてたんだ」
「情報の処理が追いつかないんですっ」
「そんなに嫌?」
私の慌てように、先輩は眉を下げ寂しそうな表情をする。
「い、嫌とかそういうわけではっ……けど、私なんかとしてもきっと何も得るものはないと」
「奈湖、キスははじめてだよね?」
「……はい」
「じゃあ、はじめてを貰うんだから、得るものだらけでしょ」
不意に髪の毛を一掬いされ、そこに優しく唇を落とされる。王子様がやることじゃないんですかそれ……!!



