もらってください、花宮先輩。〜君の初めてが全部欲しい〜

 



 ぬるい夜風が、私達の間を通り抜けていく。


 私は先輩がいなかったら、ずっと自分に嘘をつき続けて苦しいままだったのかもしれない。

 こんなに素敵な先輩が、何で私にこんなにも良くしてくれるのか本当に分からないし、何で私なんかを好きでいてくれるのかも本当に謎だ。


 先輩のキレイな顔を見つめ、むむっと難しい表情をしていると、先輩は何故か不安そうに首を傾けた。
 


「……ねぇ、もしかしてさ、奈湖」
「?はい」
「嘘をついてた自分をやめるってことは」
「……はい」
「もしかして、俺との恋人の関係も、不要になったりしちゃうのかな?」
「え」
「だってそしたら、周りに合わせて恋人を作って、はじめてを捨てる必要も無くなるから」



 そっか、そうだった。


 あまりに先輩と一緒にいるのが自然で、楽しくて、幸せで、忘れてかけていた。


 私があまりに危なっかしいから始まったこの関係。先輩は、私のはじめてを大切に貰うと言ってくれたんだ。


 けど、今後取り繕う事をやめたら、無理に恋バナに合わせる必要もなくなる。



「(嫌だ)」



 今日は、心の中の声がよく聞こえる。