もらってください、花宮先輩。〜君の初めてが全部欲しい〜





「Tシャツ貰っちゃいました……」
「よかったね。汚れたシャツで帰らなくて済んだから」
「それは良かったけど、返さなくていいのかな……」
「いいんだよ。店長さんも平気って言ってたし」



 お店で、コーヒーでシャツが汚れてしまったからと、店員さん用のTシャツを貰い、それに着替えた。


 お店を出た後も気にしていた私の頭を、先輩が撫でる。



「けど、今日の奈湖かっこよかったなぁ」
「えっ?」
「先輩に酷いことしないで……ってさ」
「……別に、かっこよくないです」
「誰にでもできることじゃないね。けど、次からは危ないからやめてほしいな。怪我したら大変だし」
「…………」
「奈湖?」



 誰にでもできることじゃない。けど、裏を返せば、誰もが選んでやることではないことでもある。


 私の考えがひねくれていることも分かってる。結果的にうまくことが運んで、感謝された。けど、こうなることばかりではないことを、私は知っている。


 帰宅する人がたくさんいる、人が行き交う大通りの真ん中で、私は立ち止まった。