床が鳴る音が近くで聞こえ、香坂先輩の私のネクタイを掴む手が捻りあげられる。



「何してるの」



 肩をグッと抱かれ、香坂先輩との距離を取らされる。横を見上げると、そこには花宮先輩が立っていた。


 いつもの先輩と違う。穏やかな雰囲気なんて一欠片もない。ギリギリと香坂先輩の手首を強く握り締め、鋭く睨みつけている。



「相変わらずだね香坂。女子に手を出すのは感心しないな」
「うるせぇな。お前みたいなヘラヘラした男に何言われようとどうでもいい」
「俺もお前みたいな暴力的で単細胞な男と会話なんてしたくないんだけどね、それでもわざわざ注意してやってるんだよ」
「あ?」
「あと、この子俺のだから。気安く触れて乱暴に扱うなよ」



 花宮先輩は、香坂先輩に負けず劣らずの威圧感だ。普段優しい人が怒ると怖いって、きっとこのことだと思い震え上がる。


 先輩が手首を放すと、香坂先輩はさっさと廊下の向こうにいなくなってしまった。すると、周りに集まっていたギャラリーも一緒にいなくなる。