先輩の忠告をしっかりと意識していなかった私も悪いけど、明らかにやばいであろう香坂先輩を見かけて、ツカツカ近付く高野さんも高野さんだ。危機感が完全に欠落しているし、背の高い二人の睨み合いは本当に怖すぎるし。
確かにね、確かにあの違反は目に余るよ。制服着崩し過ぎだし、髪だって染めてる。私だってキッパリ注意したいよ?けど命は大切だと私の本能が叫んでるもん。
えっと、とにかく、私が今できることはっ……!!
「お前なに?クソうぜぇ」
「きゃっ」
────ドンッ
目の前で高野さんが肩を押され、尻餅をつく。私は目を見開いた。ああ、ほら言わんこっちゃない。
放っておけばいいのに、そうすれば他の人が注意するのに。そう、他の誰かが……。香坂先輩は私達に目もくれず、こちらに背を向け歩き出す。あぁ、本当に、放っておけばいいのに。
「ちょっと待って下さい!」
「…………あ?」
「……高野さんに謝って。あと、服装直して下さい。生活指導の先生に言いますよ」
────やってしまった。
私は自分の口を両手で塞ぐ。けど、いってしまった言葉は取り消せない。



