私が着く頃には、ぽつりぽつりと昇降口前に風紀委員達が集まっていた。最初に生活指導の先生から有難いお言葉があるらしい。



「高野さん、おはよう」
「……おはよう」



 先に着いていたペアのクラスメイト、高野さんに挨拶をすると、一瞬視線が合ったものの、すぐに逸らされる。



「(絶対前途多難だよ……)」



 高野さんはなんというか、クラスでも浮いた存在だ。そのきっかけの出来事は、入学一週間目で起きた。


 クラスの大人しめな女子の席に、我が物顔で座り、座席の持ち主が戻ってきても気にすることなく大声で談笑していた男子がいた。挙げ句の果てに机の上に置いてあった文庫本を床に落としたのにも関わらず、笑っていた男子に、その後ろの席だった高野さんがこっ酷く注意した。



「ねぇ、そこあの子の席なんだけど。しかも本落としてるの気付いたよね?なんで拾わないの?自分がされたら嫌なことを他人にするなって教わらなかった?見てて不快。その本拾って退いて」



 ズバッとなんの躊躇いもなく、噛みもせず、あまりに鮮やかに男子を注意した高野さん。しかし、教室内はその迷いのない言葉に凍りつき、そこから高野さんは腫れ物扱いされるようになった。