「え、先輩?」
「ハンバーグも食べな」
「ちょっと、大丈夫ですよ」
「大丈夫じゃないから」
「どういうことですか?」
「奈湖は奈湖だろ?他の誰がどう言おうと関係ない」
先輩の言葉は、時折水中で酸素を与えられるように、私をとても楽にしてくれる。私の隠している本質を軽々と暴こうとする。
とても真剣な表情で見つめられ、言葉が詰まった。いつも柔らかい表情が多い分、こういうときなんて答えるのが正解なのかが分からない。
私はお箸をキュッと握り、先輩の次の言葉を待つ。
「それに、奈湖の彼氏は俺なんだから。別に食べたいだけ食べて問題ないよ。逆に心配だから、そんなに小さな弁当はやめてほしいな」
「……そうなんですか?」
「うん、大丈夫だよ。俺を理由にしたらいいんだ」
「ありがとうございます……」
「安心して自分らしくいよう」
頭をポンポンと撫でられ、じんじんと心が温まる。また一つ私の心の重しが外れた。



