私は先輩の手首を掴み教室から逃げ出し、人気のない渡り廊下まで走った。


 立ち止まり、先輩を見上げると何故か嬉しそうに目尻を下げ微笑んでいる。


 あそこで先輩が登場したから、自分から二人に話す機会を失ってしまったのに……。私はむっと口を一直線にして、口を開く。



「先輩、どうして教室に?」
「これを届けにきたんだ」
「え?」
「ほら、来週から頭髪服装検査が始まるだろ?それぞれ担当の持ち場が書いてあるプリント」



 さっきは気付かなかったけど、先輩の手には一枚のプリントがあった。私はそれを受け取り困惑する。


 だってこういうときは大体同じ学年の子が届けにきてくれるし……。