「奈湖、ごめんね」
「……え?」
「小池、あいつ最低だったでしょ」
「奈湖のこと気になってるから紹介してほしいって言われたとき、結構真剣に見えたから紹介したんだけど……昨日電話きたけどアイツないね」
「ほんとごめん。大丈夫だった?うちら軽率だったよね?」



 二人が私の顔を心配そうに覗き込む。


 驚いた。とてもとても驚いた。制服も着崩して、化粧だってして、毎日恋に彼氏に突っ走っている二人だから、きっと上手くできなかった私に対して幻滅すると思ってたのに。


 黙っている私に、二人はさらに話を続ける。



「奈湖が初カレまだだっていうから、結構真剣に良さそうな奴探したんだ」
「小池は最低だけど、男子みんながああじゃないから!」
「また紹介するし、今度こそいい奴探してくるから!」
「えっ……待って、あのね」
「ちなみに、どんな男子が好み?」



 勢いのある質問に、私はなかなか口を挟めない。どんな男子が好み?え、ちょっと、もうよく分からない。


 というか、言わなきゃ、私もう────。




「奈湖の好みは俺だよね?」




 優しく低い声がその場に響く。その声を聞き、友人達は私の背後を見て固まった。


 振り返ると、そこには先輩が王子スマイルで立っていた。え、ここ一年の教室なのになんで?



「もう紹介はいらないよ。奈湖の彼氏は俺だから」
「ひぇっ……花宮先輩が?奈湖の?」
「奈湖、マジなの?」
「う、うん。本当」
「やばいっ!!」
「すごい快挙じゃん!!」



 二人は顔を真っ赤にして大騒ぎしている。花宮先輩はにこにこと微笑みながらその様子を見ていた。


 私から言おうと思ったのに、タイミングが良いのか悪いのか……!



「せ、先輩こっちに来てください!」