「も、貰って下さい……花宮先輩」
「……本当に?」
「私、先輩にお願いしたいです。はじめて、貰って下さい」
「……じゃあ、俺が奈湖のはじめての彼氏ってことでいいんだね?」
「はい。よろしくおね────」



 言葉を最後まで発することができなかった。


 気付けば、私は先輩の胸の中にいて、ぎゅうぎゅうと抱き締められていた。いくら人が少ないとはいえ、外なのに。恥ずかしい、けどなんでだろう……嫌じゃない。


 そろりと私が先輩の背中に腕を回すと、先輩は私の耳元で熱の籠ったため息を吐く。



「……嬉しくてどうにかなりそう」
「わ、私も先輩が貰ってくれるの、嬉しいです」
「はぁ、ダメだ。本当可愛い。これからは俺の彼女なんだから、他の男子に触らせたらいけないよ?」
「私に触りたい男子なんていませんよ。だから安心して下さい」
「いるよ、ここにいる」



 身体を離され、至近距離で視線が合う。先輩の王子様みたいに整った顔が、キレイなブラウンの瞳が、私の顔を覗き込んでくる。


 キャパオーバーだ。思わず視線を逸らした隙に、頬に優しく唇を落とされ、私はふぎゃっと情けない声を上げる。すると先輩は楽しそうに微笑む。



「と、突然、なにをっ」
「隙あらば触りたいし、貰えるものは全部貰いたいと思ってる男がここにいること、忘れないでね」
「……はい」
「あれ?忘れちゃった?もう一回した方がいいかな?」
「忘れてませんっ!」



 私がガバッと立ち上がると、先輩も楽しそうに後を追って立ち上がる。


 そして、腰を折り身長の低い私の耳元で囁いた。



「これから、もっとたくさん貰うから。覚悟してね」



 私がこれでもかというくらい赤面して、わなわなと震えるのを確認し、先輩は王子様の様に微笑む。


 先輩、距離感詰めすぎです。心臓に悪いっ……。


 ──私もしかして、とんでもない人を初カレにしてしまったのかな?




※※※※