……わたしの、はじめてを、ぜんぶちょうだい?


 話を理解できずにフリーズしていると、先輩の骨張った大きな手が、私の両手を包んだ。


 そして、懇願する様に眉を下げる。




「初カレ、欲しいなら俺にして?」
「えっ……先輩、ちょっと話が、あの、理解できなくて」
「奈湖のはじめて、その辺の男と簡単に捨てるなら、俺が欲しいって話」
「……えと、あの」
「本当にもう、可愛くて心配で仕方ないんだ」



「大切に、大切に貰うから。俺にちょうだい?」



 陸に打ち上げられた魚の様に、顔を赤くし口をパクパクしてしまう。先輩の表情は真剣だ、頬も少し赤い。


 きっと、さっきの私の私の有り様を見て、先輩は心配から私の彼氏になることを申し出てくれてるんだ。このままだと、私がヤケになって初カレどころか行き過ぎた初めてまで捨ててしまうことを見抜いたんだろう。


 ……これからも、私は周りに合わせなくてはと悩んで息苦しく生活していく。今度こそもっと最低な男子を紹介され、そのまま付き合うことになってしまうかもしれない。


 ──けど、花宮先輩となら……。先輩が貰ってくれるなら。