先輩が私の手を引き連れてきたのは、駅から少し離れた噴水のある広場だった。


 同じ敷地内に公園もあって、昼間は子供達がたくさんいるこの場所も、時間帯が夕方なだけあって人が少ない。


 花宮先輩はベンチに私を座らせると、その横に座る。



「せ、先輩……あのっ」
「大丈夫だった?」
「え?」
「ごめん。駅に向かう途中でたまたま見つけて、奈湖の様子がおかしい気がしたから、近くで盗み聞きしちゃったんだ」
「……いえ、助かりました」
「怖かったよね、無理しないで」



 頭の上に、温かくて大きな手のひらが乗る。じんわりとその温かさは私の頭から心に沁みてきて、ゆらりと視界が歪んだ。