「ちょっと、声大きいよ…!」
「あ、奈湖。見て見てっ」
「あの人、インスタで話題の王子だよ」
「へ?王子?」



 平置きの雑誌に視線を落とす、一人の男子高校生。

 
 生まれつきなのか色素が薄くブラウンがかった柔らかそうな髪の毛に、穏やかそうな目元。スッと通った鼻筋に、スッキリとした輪郭。


 着崩すことなくしっかりと着こなされたブレザーの制服。背も高く、150センチない私が首が痛くなるほど程だ。


 王子と呼ばれるのも頷ける。なんというか、雰囲気のある人だ。


 ────けど、かっこいいのは分かるんだけど。



「インスタで話題って……?」
「誰かが駅のホームで電車待ってる王子を撮って、インスタに上げたんだよね。そしたらそこからバズるバズる」
「え?上げる?」
「それから、みんな王子を見かける度に撮っては上げ撮っては上げしてるんだよね」
「いやぁ〜、かっこいい。生は違うね」
「あっ、ほら行っちゃう。早く撮らなきゃ」



 友人二人がスマホを取り出し、棚の陰から王子に向ける。すると一瞬、王子の表情が固くなった気がした。


 あ、これ、待って。


 私は咄嗟に二人の手首を掴んで、スマホを下げさせる。