「誰とも付き合ったことねーんだろ?俺さぁ、そういう子初々しくてすきなんだよね」
「……そう」
「ほら、きっと俺と付き合えば彼氏いるってことで、周りとも盛り上がれるし。この先彼氏も出来たことないなんて、なんか重いって思われるよ?」
「…………」
「だからさァ、いいじゃん。俺は小森さんのこと好きなんだし。初カレにしてよ」
「みんなと同じがいいだろ?」
ぐらりと気持ちが揺らいだ。
そう、私はみんなと同じが良くて、ここまで興味のないことにもうんうんハイハイ、ニコニコ笑い合わせてきた。同じなら、はみ出なければ悪目立ちしない、傷付けられない。
そう、傷付きたくない。
こんなに最低な相手でも、私の隣に彼氏という存在がいて、彼女という肩書きを得たら私はもう安定していられるのかな。
この先もずっと無理をしていくんだ。だから、コイツと付き合うという無理を重ねても、きっと息苦しさは変わらない。
フェードアウトしようと思ったけど、正解はこっちなんだ。友人達が私たちを二人きりにしようとした意味が今理解できた。
────はじめては大切に貰ってもらうものなんて、御伽噺ですよ。先輩。
もういい、もう平気。大切にしたいと思ったけど、もうどうでもいい。捨ててやる。
「ほら、カラオケ入ろう」
「……わかっ────」
小池くんに肩を抱かれ、ゆっくりと歩きはじめた瞬間、後ろから二の腕を思い切り引かれた。



