すると、背後でザリっと地面を踏みしめる音が聞こえた。
「とりあえず、どっかで話さね?」
「うっ……は、はい」
どこで何を話すんですか?しかもその、あからさまにお前に不満がありますよって顔をやめて欲しい。純粋に怖い。
私は心の中で泣きながら、駅から離れていく小池くんの後にとぼとぼ続く。
すると、小池くんはあろうことかカラオケの入り口に吸い込まれようとしているではないか。
「えっ……あ、あの、カラオケ……?」
「は?嫌?」
「だって、話すんじゃ」
「歌いながら、合間に話せばいいじゃん」
「……それは、ちょっと」
陽キャはほぼ初対面の相手と二人きりでカラオケに入れるのか。私には絶対に無理だ。無理無理。多少慣れたらじゃないの?
しかも私、カラオケ自体得意ではないし……。何より慣れない相手とあの狭い部屋に二人きりは、ちょっと。小池くんは立ち止まった私に、ずいっと近付く。
「じゃあ何、どこならいいの?」
「こ、公園とかではダメかな?」
「は?つまんねーじゃんそれ」
「つまらない…」
「俺さ、小森さんと早いとこ仲良くなって付き合いたいわけ」
「え」
人通りの多い道で発された小池くんの言葉に固まる。



