え、私何かおかしな質問した……?顔の良い人の真顔は迫力があって怖い。
私が汗をダラダラ流していると、先輩は再び笑顔を作り口を開いた。
「へぇ、奈湖に気がある男子がいるんだね」
「ま、まぁ……そうなるんですかね……?」
「返信せずブロックして、学校で会ってもスルーでどうかな?」
「無理ですよどうしたんですか先輩」
「…………はぁーーー。そうだね、あんまり熱心に返信すると、相手に希望を持たせてしまう気もするから、程々に。無理ならフェードアウトするとか」
先輩は深い深いため息を吐いた後、私の頭をぽんぽんと撫でた。
「もし今後、何か嫌なことがあったら俺に相談して」
「う、はい……」
「奈湖は奈湖でいいんだよ」
いつの間にか雨は上がっていた。先輩の言葉で胸がぐっと熱くなった。
そんなこと言ってもらえたら、今まで頑張って作ってきた自分をやめたくなってしまう。うるさいと言って全て投げ出したくなる。
けど、簡単にそんなことはできない。中学の二の舞は嫌だ。
だから小池くんには、当たり障りなく私への興味を失ってもらうしかない。
「帰ろうか」
花宮先輩の優しい声が降ってきて、顔を上げるとパチリと視線が交わり、甘い笑みを向けられる。きっと先輩がいなかったら、私は高校生活で上手く息ができていない。
馬鹿みたいに大袈裟だけど、心からそう思うんだ。
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