もらってください、花宮先輩。〜君の初めてが全部欲しい〜




「いつか出会う、私のことを大切にしてくれる人の為に、取っておきたいです」
「うん、そうした方がいいね。それに」
「それに?」
「俺は、好きな子のはじめてを全部もらえるならすごく嬉しいな」



 ゆるっと口角を持ち上げた先輩は、見た人全てが見惚れてしまう様な、キレイな笑顔だった。高い身長に王子様の様な甘いマスク。顔だけでなく、中身も素敵だなんてどうかしてる。


 先輩は好きな人にとても一途なんだろうな。先輩みたいな人にはじめてを貰ってもらえる人は、きっと何の不安もなく幸せなんだろう。


 ポーッとそんなことを考えていると、先輩は打って変わり首を傾げた。




「……けど、友達みんなが恋愛に夢中だとしても、奈湖がそこに流されていくなんて意外だね」
「……意外ですか?」
「うん。だって奈湖、意思が固いところがあるから。俺が委員の仕事手伝おうとすると断るし、こうやって会話しててもそんなことで悩んでしまうほど、ふわふわした気持ちの持ち主には見えないんだよな」



 そうだ。私は本来、思ったことは口に出してしまう性格だし、周りに合わせるより自分の好きなことに真っ直ぐなタイプだった。


 けど、そんな私だと生きにくいし、周りから受け入れられないことも充分理解したから……。