もらってください、花宮先輩。〜君の初めてが全部欲しい〜




 先輩から視線を逸らし、アスファルトに叩きつけられる雨粒を見つめながら口を開く。ちょっとだけ気まずい。



「……私、今まで彼氏がいたことなくて」
「へぇ」
「高校に入ったら、周りのみんな恋愛に夢中で、口を開けば彼氏だとか好きな人がだとか……それで私が恋愛未経験だってことを話したら」
「……話したら?」
「初カレもできたことのない、何でも全てがはじめてって重くてめんどくさいから、早く彼氏作って捨てた方がいいと言われて」
「…………んん?」



 私の話を聞いた花宮先輩は、笑顔で固まり、頭の上にハテナマークをたくさん浮かべている。


 いや、それはそうだよね。突然こんなちんちくりんな頼りない後輩からこんな話されても、訳が分からないよね。


 けど、ここは男の先輩にしか聞けないこともある。



「……花宮先輩は、今まで彼氏がいたこともないような女ってどう思いますか?」
「うーん、そうだね」
「私、まだ好きな人とかできたこともないんです」
「そうなんだ」
「おかしいんですかね?私」
「おかしくないよ」



 突然、先輩の声がスッと真っ直ぐ響いてきた。私は弾かれるように顔を上げる。