────中学卒業を控えた春の学校帰り、友人と3人で立ち寄った駅ビルの本屋。


 雑誌コーナーで、今人気の韓国アイドルが表紙の雑誌を前に、目をきらめかせている二人の横を通り過ぎ、私は少女漫画コーナーへ急ぐ。



「あった」



 私はアイドルよりも断然漫画派だ。そして今日は大好きな少女漫画の単行本の発売日。漫画コーナーで平置きされるそれを手に取り、にやけてしまう顔をキュッと引き締めていると、遠くから友人達の楽しそうな声が聞こえてた。


 本屋の店内で出す声にしては、ボリュームが大きい。店員さんも顰めっ面をしている。私は焦りながらも二人に注意すべく、雑誌コーナーに急いだ。


 すると、友人二人が雑誌コーナーの向こう側の棚を見て、顔を見合わせ盛り上がっている。