夕暮れでも暑い通りをひたすら歩き、辿り着いたのは、思い出のある、噴水の広場だった。
先輩はベンチの前で立ち止まるとそこに座り、隣を叩く。私がゆっくりとベンチに腰掛けると、花宮先輩がスッと息を吸ったのが分かった。
思わず私は、ぎゅっとスカートを握りしめる。
「────奈湖、ごめん」
「……え?」
「ずっと、言えなかったことがある」
「…………」
「奈湖が中学生の時、助けた高校生、俺なんだ」
────先輩が、あの時の高校生? 王子様?
パズルのピースがカチリと嵌るように、あの日の高校生と花宮先輩が重なっていく。
何で今まで気付かなかったんだろう。
多分、あの日以降に起きた出来事が辛くて、そちらばかりに意識が向いていたんだ。確かに、髪の毛の色以外、同じだ。
やっと視線が交わり、動揺する。花宮先輩の瞳は、今まで見たことのないくらい不安げに揺れていた。



