「花宮、今度の委員会のプリント」
「ありがとう」
「あと、私、花宮の元カノって噂立ってるんだけど」
「は?」
「聞かれたら否定してるんだけど、あんたが唯一話す異性だからなのかな。とりあえずそっちも聞かれたら否定しておきなよ。彼女の耳にもあんまり入れたくないでしょ? そして、謎にあんた達別れたって噂も立ってるし。花宮の周り騒がしすぎ」
「……別れた」
「えっ? なに?」
「だから、振られた」



 広瀬の手からプリントを受け取り、隣を通り過ぎて席に着く。すると、広瀬は俺の席の隣に立って、困ったような表情でこちらを見下ろした。



「……振られたって、花宮が?」
「そうだよ。俺が奈湖を振るわけないだろ」
「……理由は?」
「奈湖はもう大丈夫なんだって。……自分らしくいれるらしい」
「…………」



 観覧車の中、泣きながら必死に俺を突き放した奈湖を思い出す。



『私は、充分先輩にはじめてを貰ってもらいました。……もう、平気です』
『先輩はもう、自由になっていいんです。たくさん優しくしてくれてすごく幸せでした。だから────』



 あんな痛々しい姿を見たら、あれ以上深追いなんて出来なかった。