「花宮先輩、彼女さんと別れたって本当ですか?」
「…………」
「その、良かったら連絡先教えてくださいっ……!」
「悪いけど、誰にも教えるつもりないんだ」
「あっ……ごめんなさいっ」
必要以上に異性に優しくすると、執着され理想を押し付けられる。
だから例え泣かれようと、自分の大切な人間にしか優しくしない。
別れた、という言葉に今も尚痛む傷を抉られ、顔から表情が抜け落ちる。そんな俺を見て、見知らぬ後輩は怯えたように走り去っていった。
というか、奈湖とのことが何故広まっているんだろう。昼休みの騒がしい廊下を進み、教室に戻ると、広瀬が近付いてきた。



