もらってください、花宮先輩。〜君の初めてが全部欲しい〜




 だから、いつか現れるであろう、香坂先輩を想ってくれる人を、大切にして欲しい。


 しゃくり上げる私を見て、香坂先輩は困った様に口角を上げた。


 そして、私の髪の毛を突然わしゃわしゃと撫で回す。



「えっ? なにっ」
「泣くな。」
「は、はいっ」
「泣かせたくて告白したわけじゃない」



 その低い声は優しくて、だけどどこか切なく保健室内に響く。



「奈湖らしい答えだ」
「私らしい……?」
「ああ、強い女だな。お前は」
「強くなんて」
「強いだろうが。誰かに頼って逃げた方が楽なのに、それを選ばない。流石俺の惚れた女だな」




 香坂先輩は、パイプ椅子から立ち上がる。そして、出会った当初の刺々しい雰囲気なんて全くない、穏やかな笑みでこちらを見下ろす。