「……そんなに見ないでください」
「別にいいだろ。心配なんだよ」
「平気ですよ」
「お前、花宮と何かあっただろ」

 

 香坂先輩の言葉にびくりと身体を震わせ、タオルケットを頭まで被ると、それでも布越しに話を続けられる。



「学校中、お前らが別れたって噂で持ちきりだ」
「…………」
「唯の噂なんだろ? もし、そのことでお前が悩んでるなら俺が全員黙らせる」
「……本当なんです」
「は?」
「私達、別れました。……私からお別れしたんです」



 できるだけ平常心を装ったつもりだった。だけど、情けないくらいに声はうわずっていて、私はタオルケットを握りしめる。


 もう、みんな放っておいてほしい。私を一人にしてほしい。


 分かってる。私と花宮先輩のような、釣り合わないカップルが別れたら噂になるのも。


 だけど、もう嫌だ。やめて。



「ふーん」
「ひゃっ」



 突然タオルケットが剥ぎ取られ、香坂先輩は床にそれを捨てる。


 そして、半泣きになっていた私の顔を覗き込んだ。



「花宮が嫌になったのか」
「…………」
「まぁ、あまりにも溺愛してたもんな。窮屈だったんだろ」
「ち、がいます」
「じゃあ、あいつのどこがダメだったんだ」