先輩とお別れして数日。どれだけ辛くて悲しくて、私の心が沈んでいても、それを嘲笑うかのように毎日は過ぎていき、空は青く晴れ渡っている。


 ────私達が別れたことは、瞬く間に学校中に知れ渡った。


 これまで、下校や昼休み、一緒にいることの多かった私達がピタリと会うことをやめると、途端に噂が流れ始める。直接聞きにくる人だっていた。


 そして、当たり前かのように、花宮先輩がフリーになった途端、告白が増えたらしい。


 先輩が女の子に優しく笑いかけるところを想像するだけで、胸がずきりと痛む。けどもう、仕方のないことだ。


 私ができることは、できるだけ先輩に会わないようにすることだけ。


 昼休み、窓際の自分の席で頬杖をつき、空をボーッと見つめていると、前の席に誰かが座る。



「小森さん、花宮先輩と別れたって本当なの?」
「……うん」
「なんで? 何が原因なの? もしかして、前に他の女子から言われたことが気になった?」
「ううん、違う」
「だったらどうして、仲良かったよね」
「……しょうがないよ」



 もう、これ以上話したくなかった。もう私と花宮先輩が戻ることはない。少しでもこの辛さを忘れたいのに。



「ごめん、ちょっと体調悪いから保健室行ってくる」



 私が席を立ち、教室を出ようとすると、高野さんは私の背中に言葉を投げる。



「納得、してるの?」



 ────そんなの……。


 しても、していなくても、先輩が私に同情し、仕方なく付き合ってくれていた以上、無理にでも納得しなければならない。


 私はその言葉に答えることができないまま、教室を出た。