「どうだった?奈湖」
「……楽しすぎて大変でした」
「そっか、楽しすぎると大変になるんだね。奈湖は」
「情報が追いつかないんです」
「あはは、そっかそっか。連れてきてよかったよ」
やっと明るさに慣れた視界、隣に座る花宮先輩は、私と繋いだ手にきゅっと力を込め、私の瞳をじいっと見つめて首を傾けた。
「また一緒に来ようね」
────また一緒に。
この言葉に対して、何と答えるのが正解なんだろう。
これが最後です。なんて伝えたら、先輩はどんな表情をするのかな。
やっと恋人ごっこが終わると、胸を撫で下ろす? ホッとした表情をする?
想像しただけでどうしようもなく辛くなる。まだ、あと少しだけ、先輩の彼女として隣にいたい。
だから……。
「────はい」
私は、無理矢理笑顔を作り、大きく頷いた。



