「わぁっ……!」
神秘的な音楽と共に、暗い空間に、赤や青、黄色、色とりどりの美しい光の花が咲乱れていた。
壁に触れるとそれが散り、また新たな花が咲く。先輩も興味深そうに、指先を壁に滑らせている。
見たことも触れたこともないような、人工的で美しいこの空間に、私は息を呑んだ。
「ここは、花の迷路なんだって」
「……すごいです、先輩。見てください、鳥も飛んでる」
「本当だ」
「すごい、本当に」
「あはは、奈湖、さっきからすごいしか言ってないね」
「だって、それ以上の言葉が浮かばなくてっ。そうだ、写真撮らなきゃ」
私はカバンからスマホを取り出し、夢中でこの光景をスマホに収める。
そしてこっそり、壁に咲く向日葵を見上げる花宮先輩にスマホを向けた。なんてキレイな横顔なんだろう。この空間にあまりに似合いすぎるその姿に見惚れてしまう。
こんな素敵な人が私の彼氏だったんだ。決して忘れないように、この写真を宝物にしよう。
スマホを構え、その光景に見入っていると、突然先輩がこちらを振り返り目を細めた。
「何撮ってるの? 俺も奈湖の写真、欲しいな」
「え? 私の写真なんて……」
「彼女の写真だよ? 欲しいに決まってるよ。あ、でも」
こちらに歩いてきた先輩は、私の肩を抱いて人混みを避け、壁に寄ると、自分のスマホを取り出してインカメラにした。
そして、顔を寄せ、ドキリとした私が言葉を発する前に、シャッターを切る。



