まさかバレるだなんて思わなかったから、驚きで言葉を失った。
香坂先輩の表情は、真剣なものだった。
「なんでもないです」
「なんでもなかったら泣かない」
「香坂先輩には関係ない」
「お前も、関係ない俺の問題に首を突っ込んだだろうが」
「……言いたくないんです。仕方のないことなので」
「へぇ」
仕方ない、そう自分で言ったのに、理解してるのに、また涙が出そうになる。見られたくなくて思い切り顔を逸らすと、突然頭の上にポンと手が乗った。
髪の毛を掻き乱すように、わしゃわしゃと雑に撫でられ、私はされるがままになる。
「こ、うさかせんぱい?」
「理由なんてどうだっていい。とにかく、泣きたいなら一人で泣くな」
「え?」
「花宮の前で泣けないなら、俺んとこで泣けよ」
「…………」
「無理に話せなんて言わねぇから。お前には、出来るだけ笑っててほしい」
その手の温かさに涙が引っ込んで、ゆっくりと顔を上げると、香坂先輩が照れ臭そうに唇をツンと尖らせていた。
大人びた見た目なのに、その子供のような仕草に心臓が鳴る。
「お前がいたから、俺は変わろうと思えたんだ。だから、何かあったら助けてやる。俺を呼べ」
香坂先輩はそう言うと、ベンチから立ち上がる。
それをポカンと見上げる私を見下ろし、思い切りデコピンをしてきた。あまりの痛みに呻く。



