「お前、何してんだよ」
真夏の暑さと泣いたことで、とてつもない目眩と頭痛で動けなくなった私は、駅前通りの木陰のベンチで、体調が落ち着くのを待っていた。
そんな中、聞き覚えのある声が頭の上から降ってきて顔を上げると、そこには香坂先輩が眉間に皺を寄せ、ポケットに手を突っ込み立っていた。
髪の毛を黒く染めたところで、ガラが悪いのは変わらない。
「香坂先輩……」
「うわ、顔真っ赤じゃねぇか。花宮はどうしたんだよ」
「……用事があるみたいで」
「チッ……待ってろ」
香坂先輩は小さく舌打ちをすると、どこかへ消えてしまう。何だったんだろう、まぁいいか。
目を閉じて数分すると、急に頬に冷たいものが当てられる。私は驚き大袈裟に肩を跳ねさせた。
「ひゃっ」
「これ、飲め」
「え、香坂先輩……?」
私の隣に座った香坂先輩は、私にスポーツドリンクを手渡し、ドラッグストアの袋から冷えピタを取り出すと私の額に雑に貼る。
その冷たさに少しだけ冷静になり、私は香坂先輩を見つめる。



