自分の意思を貫けず、フラフラしていた私に自信を付けてくれるために、近くで支えてくれていた。先輩がそばに居てくれたから、私は私を取り戻せた。
恋人らしく振る舞うことで、初めての経験がスムーズにいくように、気を遣っていてくれていた。
──きっと、いい思い出になるように。
「……そういうこと、だよね」
────もう、先輩を解放してあげなきゃ。
花宮先輩の優しさから始まった関係だ。私が不甲斐ないから、仕方なく先輩が貰うしかなかった。
私馬鹿だな、気付くの遅いよ。
花宮先輩が優しくて、大切にしてくれて、勘違いしてた。私達の関係は、恋から始まったものではないのに。
もう、たくさんたくさん、貰ってもらった。恋人としてのはじめてを。
だから、私から終わりにしてあげなきゃ。仕方なくはじまったこの関係を、早く────。
「……っ」
もっと早く気付けば、こんなに好きになる前に終わらせられたのに。手放せたのに。もう少しだけ、後少しだけ先輩と一緒にいたい。最後だからワガママ言ってもいいかな?
馬鹿みたいに、頬を涙が伝っていく。息が苦しい。
あぁ、これも初めて。先輩は最後まで私の初めてを貰ってくれるんだ。
────私はもうすぐ、初めての失恋をする。
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