「仕方なかった、かぁ……」
下駄箱で上履きをローファーに履き替え、昇降口を出る。私の口からこぼれ落ちた言葉は、あまりにも情けないものだった。
校庭では野球部が暑い中練習をしていて、それを上の空で見つめながら、校門を抜ける。
暑い気温の中、とぼとぼ下校しながら、これまでの花宮先輩と過ごした日々を思い出した。そして、重大なことに気付く。
花宮先輩は、私が無理矢理初めてを捨てようとしていたところを救ってくれた。
捨てるなら貰うと、私を、助けてくれたんだ。──仕方なく。
「先輩、優しいから」
足を止め、ポツリと呟いた言葉が真夏の熱いアスファルトに溶けていく。
きっと、花宮先輩は優しいから、責任を持って私の初めての彼氏を全うしてくれてるんだ。



