「酷いっ……こんなに好きなのに」
「…………」
「花宮くんはみんなの王子様だから、もっと優しく断ってくれると思ったのに」
「え?」
女子は俺を取り残し、泣きながら出ていってしまった。
────王子様だから?
その時、俺はその言葉の意味が分からずにいた。
けど、徐々にその単語を聞く機会が増えていく。
「花宮は王子様なんだから、もっと笑ってろよ」
「王子様みたいに、優しくしてほしい」
「花宮王子、ほら、あそこで女の子が呼んでるぞ」
「花宮くんは、理想の王子様なんだよ?黙ってないでさ〜」
俺の見た目から付けられたあだ名。それは理解出来た。
けど、事あるごとに、王子王子って見た目だけでなく中身のことまで強要される。優しく穏やか、そして『みんな』に優しい。
少しでも王子の理想から外れると、お前はそうじゃないだろと、勝手を知ったようにそのレールに引き戻される。
楽しい時に馬鹿みたいに笑いたい、冗談を言うこともある、嫌なことをされたら怒りたい、静かに黙っていたいときもある。泣きたいときも。



