「先輩、黒染めしてたんですか?」
「……えっと」
「コイツ、地毛茶色いんだよ。だから」
「香坂うるさい。黙れ」
「おー、こわ」
香坂先輩の肩を勢いよく花宮先輩が掴む。雰囲気が恐ろしい……。
けど、地毛が茶色なら染める必要ってあるのかな?元からなら仕方ないと思うんだけど。
花宮先輩のことを一つも気にせず、こちらに視線を向けた香坂先輩は、楽しげに歯を見せて笑った。
「秘密が多いと大変だな」
「…………」
「奪われないよう、気をつけた方がいい。俺は本気だからな」
香坂先輩の、じっとりとした熱を含んだ視線。
この前と同じように、私の背筋はぞわりと粟立つ。
────秘密が多いと大変ってなんのことだろう。
聞こうと思って口を開いたけど、同時に花宮先輩が私の肩を抱き歩き出す。
花宮先輩の唇は、固く閉じられていた。
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