私の言葉を聞いた先輩は、困ったように眉を下げ、悩ましげな表情をする。
そして私の頭の上から手を避けると、髪の毛を一掬いして、じっとこちらを見つめる。うわぁ、瞳の色がキレイなブラウン。王子様みたいだ。
「そんなことないんだけど」
「え?」
「俺はそんなに善人ではないよ?」
「ぜんにん……」
「うん。だから、奈湖が特別だよ」
「そうですよね。先輩から見たら、私みたいな小さな後輩、特別心配になっちゃいますよね……」
「……あははっ、そうだね」
私のネガティヴ発言に、先輩は目を丸くした後楽しそうに笑う。そして私の髪の毛から手を離した。
「心配になるくらい可愛い後輩、かな」
先輩はそう言うと、再び私からポスターを奪ってスタスタと廊下を進んでいく。私は慌ててそれを追いかけた。
先輩には心配ばかり掛けているのに、可愛い後輩なんて言ってもらえて嬉しい。たまに距離感がおかしいと思う時もあるけど、花宮先輩と過ごす時間は、穏やな気持ちでいられる数少ない時だ。
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