もらってください、花宮先輩。〜君の初めてが全部欲しい〜




「少しずつでいいんです。苦しいことや痛いことに鈍くならなくていい」
「…………」
「もしお母さんに一人で話すのが嫌だったら、花宮先輩についてきてもらって、私も同席してもいいですし」
「…………」
「あと、目付きとガタイの良さは仕方ないので、せめて服装と髪色をもう少し落ち着かせたら絡まれなくなりそうな気もします…」



 私の提案に、香坂先輩はうんともすんとも言わない。


 何が正解なんだろう。香坂先輩にとって一番いい道は?


 本人は嫌がるかもしれないけど、休み時間になったら冷静な花宮先輩も呼んで意見を聞いた方がいいのかも。


 私がポケットからスマホを取り出した時、私の身体が大きな影に覆われた。それは、立ち上がった香坂先輩の影で────。




「奈湖、お前やっぱりお人好しだな」
「え」
「変わっても変わらなくても苦しいのか。だったら、痛くねーほうがいいな」



 香坂先輩はどこか吹っ切れたような表情をしていた。そして、今までにない穏やかな表情で、立ち上がった私の頭をがしがしと強い力で撫でる。


 お母さんに話すことにしたのかな。うまくことが運ぶといいな。



「悪かったな」
「え?な、なんですか急に」
「最初、乱暴にした」
「べ、別にいいですよ」



 私は、香坂先輩に撫でられぐしゃぐしゃになった髪の毛を整える。


 謝るなんて、香坂先輩らしくない気がする。