どうしよう、先生を呼んできた方がいいかな?そう思った時、香坂先輩の口から掠れた声が発された。
「本当はずっと痛かった」
「そ、そんなにですか?」
「怪我って、痛いんだよ。すげぇ」
「そんなの、当たり前じゃないですか」
「奈湖、お前が気付かせたんだ」
香坂先輩が視線を上げる。その目は、迷うように、怯えるように揺れている。
私が、気付かせた?
「家では母親の再婚相手の男が、何かにつけて俺に手を上げる。この頬も、今朝やられた」
「……え?」
突然の告白に、血の気が引く。家族にそんなことをされたの……?
思わず口元を抑えた私に、香坂先輩は続ける。



