「よぉ、奈湖」
手負の獣こと、香坂先輩だ。真正面から見たら、やはり怪我が痛々しい。
それなのに、香坂先輩の機嫌は良さそうだった。
それより、なんで気付かれてたの?
私の考えを読んだのか、香坂先輩は私の視線に合わせて地面に片膝をつき、口角をニッと上げた。
「階段上りながら、視界の端で小さいのがウロウロしてるなって思ったらおまえだった」
「気付いてたんですね……!」
「で?なに。奪われにきたのか?」
「違います」
悪どい表情で楽しそうに私の顔を覗き込む香坂先輩に、私は袋を差し出す。
「これ、あの、怪我してたから」
「……は?」
「保健室で貰ってきたんです。お大事にしてください」
香坂先輩は困惑した表情をした後、ゆっくりと私から袋を受け取った。
そして、次の瞬間肩を揺らして笑い出した。