「奈湖は、困ってる人を放っておけないからね」
「今回は怖すぎて本当に悩みましたけど」
「……ねぇ、奈湖。香坂に揺れたりした?」
先輩の言葉に、私は目をパチクリさせる。
だって、まさか先輩の口からそんな言葉が出てくるなんて、思っても見なかったから。
至って本人は真剣らしく、相変わらず不安そうに私を見つめている。
そっか、先輩の様子がおかしかったのは、香坂先輩の奪う発言のせいだったんだ……!
そうと分かれば、私は先輩の両頬を手の平で包む。
「私が花宮先輩以外に揺れるなんてありえませんよ」
「……本当に?」
「これだけ甘やかされて、大切にされてたら、先輩以外なんて考えられません。香坂先輩にも伝えてあります」
先輩に安心して欲しい一心で、自分の気持ちを伝える。照れ臭くて、きっと頬は赤くなっているけど、今そんなことは関係ない。
いつも私を肯定して、安心させてくれる先輩に少しでも不安になって欲しくない。
すると、先輩は私の両手の上から手を重ねる。
そして、口を開いた。
「じゃあ、奈湖は俺が好き?」
先輩は、困ったように眉を下げ、不安そうな表情のまま私を見つめ続ける。
王子様のような完璧なお顔が歪んでいるだけで胸が痛むのに、先輩はここでこんな質問ずるいと思う。
けど、いつまでも考え続けていても仕方ないことだと、今ストンと気持ちが落ち着いた。



