「先輩っ、花宮先輩っ」
「……心配した」
「えっ」
「何もされてない?香坂と何を話したの?」
「えっと」
「奈湖には、俺以外に触れられてほしくないのに」
花宮先輩の声は、とても不安そうに揺れていた。
ふっと、拘束に近い抱擁を解かれる。
私は呼吸を整え、先輩の顔を見上げる。すると、迷子の子供のような瞳と視線が合った。
「物理攻撃は受けてません。だから大丈夫です」
「もしアイツが奈湖を殴ってたら、冷静じゃいられないよ。……で、なんで攫われたの?理由は?」
「昨日、香坂先輩が駅前で不良達に囲まれてて、私が交番に駆け込んだのを見られてたみたいで」
「へ」
「何企んでるんだ〜…みたいな」
「それでアイツ、奈湖に目をつけたんだね」
まるで子供にするように、よしよしと頭を撫でられ安心する。
しかし、先輩の声色は暗いままだった。



