いつの間にか朝のチャイムは鳴っていたらしく、校舎内は静まり返り、微かに教師たちの声が響いている。
そんな中、花宮先輩は私の手を引き、空き教室へと引き込む。それまでずっと、先輩は無言だった。
こんな先輩初めてで、どうしたらいいのか分からない。
「せ、先輩?」
「…………」
「あの、だいじょっ……んぶっ」
手を引かれ、先輩の腕の中に閉じ込められる。
先輩は私を抱きしめるとき、自分で言うのはなんだけど、まるで宝物を扱うように、優しく抱きしめてくれる。
だけど、今日は違う。
ぐっと胸に抱き込まれ、苦しいくらいだ。それを伝えたくて先輩の背中に腕を回し、何度か叩くけど、力は弱まらない。



