「いい加減にしろ。泣いて嫌がってるのに担いで歩くなんておかしいだろ」
「普通に話してただけなのに、なんで泣くんだろうな」
「お前の行いのせいだろ。金輪際奈湖に近づくな」
「随分入れ込んでるんだな」
花宮先輩の背中越しに、バチりと香坂先輩と視線が合う。
「奪われないように、気を付けろよ」
その不敵な笑みに、背筋がゾッとした。それは花宮先輩に言っているの?
それとも────。
「行くよ、奈湖」
「は、はい」
「香坂、お前には奈湖を奪えないよ」
花宮先輩は私の手首を掴むと、廊下を歩き出す。
恐る恐る後ろを振り返ると、香坂先輩がこちらをじっと見つめていた。
そして、楽しげに口を開く。
「またな、奈湖」
私はあまりの恐怖から息を呑み、勢いよく視線を逸らした。
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