奪えば関係ない?そんなこと────。
「無理ですよ」
「あ?」
「私も、私のはじめても、花宮先輩だけのものです」
「…………」
「諦めてください。私は香坂先輩のものにはなりません」
私は、花宮先輩だからはじめてを貰って欲しいと思った。
先輩から日々与えられる大きすぎる愛情は、私に息の仕方を教えてくれた。私は私でいいと、何度も時間を掛けて伝えてくれた。
だから、香坂先輩に何と言われようと、私は花宮先輩のものだ。
不意に、大きな手が肩に乗る。そして、しばらく黙っていた香坂先輩が声を発した。
「お前、名前は────」
────バンッ!!
香坂先輩の言葉と同時に、美術室のドアが大きな音を立てて開いた。



