花宮秀先輩、私の入っている風紀委員会の一つ上の先輩だ。入学して初めて委員会に入った時から、先輩は私に世話を焼いてくれる。きっと私が頼りなさそうに見えるからだろうけど、それにしても甘やかされている自覚はある。


 先輩が持った私に割り振られたポスターを取り返し、首を横に振る。



「先輩、これは私の仕事なので」
「うん、知ってる。けど、自分の仕事を終えた人間が手伝ってはいけないなんて決まりもないよ」
「……ま、まぁ。そうですけど」
「俺が奈湖を手伝いたいんだ。だから遠慮しないで」



 先輩は私を見下ろし、優しく目尻を下げる。その言葉は、高校生活で猫を被りすぎ、ささくれ立った心に温かく溶けていく。