「目の前で、困ってる人がいたら助けるじゃないですか。だから、特に理由はありません」
「……助けるか?」
「私は助けたいと思うんです。まぁ、香坂先輩達の喧嘩は怖すぎて迷いましたけど」
「…………」
「私が知らんぷりして、次の日怪我してるの見たら後悔しますし……それに、殴られるのって痛いじゃないですか」
例え先輩が喧嘩慣れしてても。……とは言わなかったけど。
私の言葉を聞き、先輩の眉間から皺がなくなる。代わりに、ぱちぱちと目を大きくし瞬きをする。
「……確かに、痛ぇな」
「はい、絶対痛いです」
「家の中でも外でも喧嘩ばっかりで、当たり前すぎてその感覚忘れてたな」
「えぇ……」
「そうか、俺が困ってそうに見えたのか」
「は、はい」
「……そうか」
香坂先輩くらい不良になると、痛みにも強くなるの?
いやいや、絶対そんなわけない。



