言い返したら余計に睨まれた。怖すぎる。
どうにか逃げられないかと、ブルブル震えながら視線を彷徨わせていると、突然脇の下をガッと掴まれ、身体が浮いた。
「ひっ、いやぁぁぁっ!!」
「うるせー、黙ってろ」
「助けてぇっ!人攫いっ!こ、ころされるっ」
「殺さねぇ」
香坂先輩は、私をまるで米俵のように担ぎ、廊下をズンズン進んでいく。
私の悲鳴でギャラリーが集まるも、香坂先輩を止める人はいない。みんな顔を青ざめさせ、中には御愁傷様と拝んでいる人までいた。
「小森さんっ?!」
「高野さんっ、助けてっ」
「うっ…………待ってて!」
「え?!」
高野さんはこの恐ろしい光景を目の当たりにし、自分では助けられないと悟ったのか、どこかに走り去ってしまった。
待ってって……待ってる間に私、ボコボコにされてるんじゃ……。
「お願いします……一発で仕留めてください……」
「あ?何言ってんだよ」
「怖い……怖いよぉ……」
不良の大男が、悲鳴を上げ泣き喚く小さな女を担いで廊下を歩くこの光景は後に、地獄絵図だったと生徒達は語る。
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