おかしい。こんなはずではなかった。
「わ、私は何も知りません」
「……いや、お前のはずだ」
「ひぃっ」
────バコンッ!!
あまりの恐怖に後退りすぎて、後頭部を窓ガラスに思い切りぶつける。痛い、痛いけどそれどころではない。
私は今日、清々しい気持ちで登校した。天気も雲ひとつない快晴で、良い一日の始まりだと思った。
昨日先輩との電話で『何かいい事あったの?』なんて聞かれてしまうくらい、自分の行動で香坂先輩の命(?)を救えたことに心からほっとしていたからだ。
────なのに、下駄箱で靴を履き替え廊下を歩いていると、どこからかヌッとと現れた香坂先輩に行手を阻まれ、あろうことか窓際に追い詰められている。