「こ、香坂先輩っ……?」



 高い身長、悪人さながらの目付き、高校生に見えない大人のようなシュッとした顔付き、着崩した制服。


 あれは、この前私のネクタイを引っ張り恐怖のどん底に突き落とした香坂先輩に間違いない。
 

 私が固まっていると、香坂先輩が黙っているのに対して周りの不良達はヒートアップしていく。



「いつまで黙ってんだよ!!テメェ!!」



 リーダー格の一人が香坂先輩の胸倉を掴むと、そのままビルの間の人気のない路地に引っ張っていく。


 香坂先輩はされるがままで、それに囲んでいた不良達はニヤつきながらついていく。



「……ど、どうしよう」



 最悪な現場を見てしまった。顔から血の気が引いていく。


 私は香坂先輩に対して良い印象は抱いてない。酷いことをされたし、何より怖い。助ける義理もない。


 不良同士ならこういうことも日常茶飯事なんだろうから、放っておけばいいんだろうけど……。