どうにもこうにも~出会い編~

「彼氏なんて人生で一度もいたことないんです、実は」


 彼はは数秒思案した様子で宙を見つめ、再び口を開いた。

「娘を持つ父親の心境みたいですね。石原さんに彼氏ができたら、きっとお父さんは不安で仕方がないでしょう」

 彼の妙に神妙な顔を見たらビールを吹きそうになった。

「むしろ私の父は、早く彼氏のひとりやふたり連れて来いって言ってますよ。俺がいい男かどうか品定めしてやるって」

「面白いお父さんですね」

 ビールとチューハイが2本ずつ入っていたが、ふたりで二本ずつ飲んで全部空けてしまった。その頃には終電時間が迫っていた。

「そろそろ帰らないとまずいですね」

「あ、お酒代半分払います。いくらでした?」

「払わなくていいですよ。私が勝手に持ってきたものですし」

「でも…」

「缶ビールくらい奢らせてください」

「すいません。ありがとうございます」

「さて、帰りましょうか」

 立ち上がると足元がふらついてしまい、西島さんの腕にしがみついてしまった。

「大丈夫ですか?」