私はあの日以来、電車のホームで西島さんがなんと言っていたのかを悶々と考えていた。

西島さんの答えが「はい」だったのか「いいえ」だったのか、私にはよくわからなかった。あの表情から推測するに、「はい」だったような気もするし、「はい」なんて返事より長かった気がする。

でも「はい」や「いいえ」以外の答え方だってある。西島さんのことだから、あの表情で「いけません」とでも「だめですよ」とでも言いそうだ。いやそもそも聞こえなかったのかもしれない。「ではまた」とか言って手を上げただけかもしれない。

というか、もしかしたら、いやもしかしなくても、奥さんやお子さんがいるのに、こんな若い小娘と飲むなんてことはきっと言語道断だ。


「あーもうわからーん!」


 ひとり部屋で叫んでみても、誰も答えは教えてくれない。答えを知っているのは西島さんのみ。私はベッドの上に大の字になって寝ころんで天井を見上げた。

「西島さん…」